水がおこるとき
人間は大昔から、川や湖や海など、水の近くで暮らしてきました。水はわたしたちを育み、わたしたちに安らぎをあたえてくれます。その一方で、水はおそろしい力で人間の暮らしを破かいすることもあります。台風や大雨によって川がはんらんしたり、こう水などの水害が起きたりします。地しんによるつ波なども、水害の例です。ここでは、わたしたちをおびやかす水の力について考えてみましょう。
1. 水害が増えている!
「水害」という言葉を聞いたことがありますか?水害というのは、水に関係する自然災害のことで、次のようなものがあります。
●こう水…大雨や台風で、川などから、水があふれ出ること
●土砂くずれ…大雨などで、山やがけがくずれること
●高潮…海の水面の高さがふだんよりずっと高くなること
●つ波…海底で起こる地しんなどで発生し、海岸の近くで急に数メートル〜数十メートルもの高さになる波
大きな水害が、日本でも世界でも、増えるけい向があります。最近の水害の例を見てみましょう。
●2004年(平成16年)
- 10もの台風が上陸しました。これは1951年(昭和26年)に台風の観測を始めてから2008年(平成20年)までで一番多い記録です。
- 死者43人を出した台風18号、死者・行方不明者98人を出した台風23号など大きなひ害が出ました。
- 水のひ害は合計で死者が200人をこえ、水につかった家は約20万むね、ひ害総額はおよそ2兆円にもなりました。
●2005年(平成17年)
- 梅雨前線のえいきょうにより、熊本県と大分県で、7月8日〜10日の3日間に約400ミリメートルの大雨が降りました。
- 台風14号では、九州地方で9月3日〜6日までの6日間のうちに2か月分に相当する集中ごう雨がありました。宮崎県神門では3日間で1,321ミリメートルになり、観測を始めてから一番多い記録になりました。
●2011年(平成23年)
- 新潟県と福島県で、7月28日〜30日の3日間に1,000ミリメートルに達する記録的な大雨が降りました。
地球を包む大気の温度は、少しずつ上がっています。海の温度も上がっています。大気と海水の温度が上がると、雨や台風などの動きも変わり、地球全体で異常気象が増える原因になると考えられています。
ある地域では、一度に大量の雨が激しく降る「異常な多雨」が増え、また別の地域では、まったく雨の降らない「異常な少雨」が増えています。今後100年、地球の温度が今と同じように上がり続けると、異常気象はますます起こりやすくなると考えられています。
2. 川のはんらん・こう水
こう水は、川の水の量が、雨などでふだんよりも増えたために起こります。
日本は昔からたびたびこう水のひ害に苦しめられてきました。どうして、こう水が多いのでしょうか。
けわしい地形が多い日本は、山から海までのきょりが近く、川は急流が多いのが特ちょうです。山に降った雨は、あっという間に川に流れこんで、短い時間で海まで流れていきます。このような地形では、一度にたくさん雨が降ると、川の水はみるみるうちに増えていきます。
●台風の上陸が多い
日本は、台風の通り道にあり、例年いくつもの台風が上陸します。台風は一度に多くの雨をもたらすため、その結果としてこう水が起こりやすいのです。
こう水を起こしにくくするために、これまで多くの工事がおこなわれてきました。川の流れを変えたり、てい防をつくったり、遊水池※などをつくったりしたのです。この工事のおかげでこう水のひ害も減り、たくさんの人が川の近くの平野で暮らせるようになりました。
ところが最近、また別の原因で、こう水が起こりやすくなってきたのです。
※遊水池とは… 大雨が降ったときに、一時的に水をためる場所。
●森林が減った
山の森が切られて減ってしまうと、山の土が流されて山は水をためておく力をなくします。山に降った雨が、一気に川へ入るようになりました。
●田畑が減った
田んぼ、畑、はだか地が減って、住宅地になりました。土の部分が少なくなり、雨がしみこんでいく場所が減ってしまいました。
●集中ごう雨が増えている?
日本でも、世界でも、雨の降り方が変わってきています。たとえば東京都では1970年代あたりから短い時間にたくさんの雨が降る「ごう雨」が増えています。しかし、歴史をふり返ってみると、東京都の集中ごう雨の発生ひん度は1890年代から1940年代に増加しその後1970年代まで減少していることがわかります。今後このけい向がどのように変わってくるかを明らかにするために様々な研究が行われています。
こう水が起きにくい環境と起きやすい環境
このような原因のため、特に工事があまり進んでいない中くらいの川や小さな川でのこう水が増えると考えられています。
3. 暴れる海・つ波と高潮
地しんが起こると、すぐにテレビに情報が出ます。「つ波の心配はありません」というのを、見たり聞いたりしたことがあるでしょう。
また、台風が来たときに、気象情報で「高潮に注意してください」と、いいます。つ波は地しんや海底火山のふん火によって起こり、高潮は台風などの強風や大きな低気圧によって起こります。
●つ波
海底で地しんが起こると、海底が大きくもり上がったり、へこんだりして変形することがあります。この変形が海面に伝わって、波が生まれます。これがつ波です。この他に海底火山のばく発などでもつ波が起こる場合があります。
ふつうの波は、海の表面だけが動いていますが、沿岸に達したつ波の場合は、海の底から表面まで、全部の水が動いています。つまり、ものすごい量の水が波となって移動しているのです。そのため浅い岸に近づき、さらにせまい地形の場所では、波は急に高くなり、岸のそばの建物や船などにおそいかかる場合があります。
つ波が起きる環境
●高潮
海は、ふだんから月の引力にえいきょうを受けて、少しずつふくらんだり縮んだりしています。海に満潮と干潮があるのも、そのためです。
台風のように大きな低気圧が海の上に来ると、そこだけ気圧が低くなり、海面が吸い上げられて、もり上がるのです。さらに、岸に向かう風によって海水のふき寄せが起こります。これが高潮です。
965ヘクトパスカルの台風では、その中心にある海はふだんより約48センチメートルもり上がります。
高潮がおきる環境
2004年(平成16年)12月には、インド洋で地しんによる大つ波が発生、約20万人もの人がなくなりました。日本に10回も台風が上陸した2004年(平成16年)には、各地で高潮のひ害がたくさん出ています。
また2011年(平成23年)3月11日には、東日本大震災で発生した大つ波により、行方不明者もふくめ、2万人をこえる人がなくなりました。
川や海のそばにも建物はたくさん建って、人が暮らしているね。そんなところで水害が起こったら、大変だ!海や川が暴れるのは、わたしたち人間にも原因があるのかもしれない。もっと水と仲よくできるように、なにができるのか考えてみよう。