旅する川、形を変える湖2
わたしたちの住む地球には、不思議な湖があります。場所を変えながら、ときどき姿を現す湖、ロプ・ノールがあります。水がつくる大自然の不思議をさらに見ていきましょう。
1. さまよえる湖? ロプ・ノール湖
中国の西のはし、ヒマラヤ山脈と天山(テンシャン)山脈にはさまれたタリムぼん地に、世界中のぼう険家を夢中にさせた湖があります。ロプ・ノールという湖です。
昔はとても大きな湖で、すぐそばに桜蘭(ローラン)という大きな町もありました。ロプ・ノール湖に注ぎこむ川は、タリム川といいます。桜蘭(ローラン)はシルクロードの中の重要な場所で、ロプ・ノール湖の豊かな水を利用して大いに栄えました。
ところが、ロプ・ノール湖の水が干上がると共に、桜蘭(ローラン)もおとろえ、ほろんでしまいます。桜蘭(ローラン)はまぼろしの都として、長い間、歴史の文書の中でしか知られていませんでしたが、20世紀の初めに町の遺せきが発見され、世界中をおどろかせたのです。
発見したのはスウェーデンの探検家、ヘディング。ヘディングは「この川が流れるルートを大きく変えるので、それによってロプ・ノール湖も消えてしまったり、別のところに現れたりする」と考え、湖は1500年ごとに移動すると説明しました。ロプ・ノールは「さまよえる湖」と呼ばれるようになり、世界の探検家の中にロプ・ノール湖を探そうというロプ・ノールブームがおこったのです。
ロプ・ノール湖の場所
<ア. 本当に移動するの?>
タリム川は、砂ばくの中を流れる浅い川です。わずかな高低の差で、流れ方にえいきょうを受けます。強い風や川が運ぶ砂や土などで、砂きゅうの位置が変わると、そのため土地の高さが変わり、川の流れる道すじが変わります。すると、タリム川によってできた湖、ロプ・ノールも、それによって位置を変えるというわけです。
現在、川の水が少なくなったのは、用水としてたくさんの水を引くことが大きな原因とも考えられています。1500年ごとに移動するというヘディングの説が正しいかどうかは未だ明らかになっていません。
<イ. 今はどうなっているの?>
この100年のロプ・ノール湖の動きは、次の通りです。
1921年(大正10年)ごろ ロプ・ノール湖、昔の場所に復活する。
1972年(昭和47年)ごろ ロプ・ノール湖、消える。
1980年(昭和55年)ごろ 日本と中国が合同調査。ロプ・ノール湖発見できず。
2004年(平成16年)ごろ ロプ・ノール湖、現れる。
北い40度50分、東経90度14分。
しかし2005年(平成17年)にはまた消えてしまいました。
この後、いつまたどこに現れるかは、なぞに包まれています。
2. 水を吸ってふくらむ天然ポンプ トンレサップ湖
トンレサップ湖は、カンボジア西部にある大きな湖です。湖の北には世界遺産にもなったアンコールワットの遺せきがあります。
湖から流れ出る川はトンレサップ川。下流でメコン川と合流して、海に流れます。トンレサップ湖の特ちょうは、雨期とかん期で大きさが何倍にも変化するところです。
毎年5月〜10月の雨期になると、メコン川の水かさが増えて、トンレサップ川の水が湖に逆流してきます。トンレサップ湖はだんだん大きくなり、川から流れこんできた水をたっぷり吸いこみ、たくわえます。10月が過ぎると、川の流れがもとにもどります。するとトンレサップ湖は少しずつためこんだ水を川にはきだし、小さくなっていきます。
これを毎年くり返しているのです。雨の少ない季節にも水をあたえ続けてくれるので、トンレサップ川のまわりは豊かな農地になっています。魚も大変多く、カンボジアの人びとの暮らしを支える、母なる湖となっています。
トンレサップの場所
トンレサップのイメージ
<ア. どのくらい大きさが変わるの?>
トンレサップ湖は、とても大きな湖です。一番小さいときでも、面積は2,500平方キロメートル〜3,000平方キロメートルです。東京都の面積が約2,100平方キロメートルですから、どのくらい広いかわかるでしょう。その大きな湖が、雨期にはさらに5倍も大きくふくらむのです。
一番小さいとき(かん期)
面積:2,500平方キロメートル〜3,000平方キロメートル
深さ:約1メートル
一番大きいとき(雨期)
面積:1万1000平方キロメートル〜1万3000平方キロメートル(最大1万8000平方キロメートル)
深さ:約10 メートル
<イ. 湖の周りの人達は、大じょう夫なの?>
トンレサップ湖の周りに住んでいる人達の中には、トンレサップ湖が大きく深くなる雨期の間だけ、別の陸上の家に引っこす人もいます。
多くの人びとはこの湖で漁業をして暮らしています。自分達にめぐみをあたえてくれる湖ですから、湖の変化に合わせて上手に生きているのです。
川や湖が、こんなに激しく変化するものだなんて、ちょっとびっくり! 人間も動物達も、その変化に合わせて上手に水と生きているんだ。水はいつまでも、同じようにあるわけじゃない。それを忘れずに、水を大切にしてうまく暮らしていかなくちゃね。