旅する川、形を変える湖1
川や湖は、地図にしっかり記されています。地図を見ていると、山や川は場所を変えず、いつでも同じようにあるものだと思うかもしれません。ところが世界の中には、不思議な川や湖があるのです。水がつくる大自然の不思議を見てみましょう。
夏だけ現れるきょ大なしつ原・オカバンゴしっ地
オカバンゴ川は、アフリカ南部のボツワナ、ナミビア、アンゴラ、ジンバブエを流れる川です。この川は、アンゴラの高原地帯から始まり、ボツワナに入り、たくさん枝分かれして流れながら、最後はカラハリ砂ばくの中へしみこんで消えていきます。
この川は、かん季である夏になると毎年こう水を起こし、砂ばくの北にある低い土地を水びたしにしてしまいます。これがオカバンゴしっ地です。アフリカ最大級のデルタ地帯です。
しっ地が姿を現すと、砂の中でねむっていた魚などが目を覚まして泳ぎだします。植物の種も芽を出し、砂ばくだった土地は、見る見るうちに緑と水の楽園に変わります。水を求めていろいろな動物が集まり、たくさんの生き物達がこの水辺で子育てをします。砂ばくの中に夏の間だけ、生き物達の楽園ができるのです。冬になると水は無くなり、小さな水たまりをあちこちに残して、しっ地は姿を消してしまいます。
オカバンゴの位置
オカバンゴのイメージ
<ア. 大きさは?>
約2万平方キロメートル。日本の四国がすっぽり入る大きさです。
一番水の多い時期には、そのうち1万5000平方キロメートルが、水の下にしずみます。
<イ. どうして夏になるとしっ地になるの?>
しっ地のできる場所は、昔は湖でした。その湖がうまって浅くなり、水がどんどん蒸発して、やがて湖はなくなりました。それでも、川の水が流れこみやすい地形になっているので、川の水が増えると、同じ場所に水がたまるのです。
アンゴラ高原では、雨期にたくさんの雨が降ります。その雨がオカバンゴ川に流れこんで、ボツワナに来るまでに数か月かかります。そのため、ちょうど夏で水の少ない季節に、しっ地になるのです。
<ウ. 毎年必ずしっ地になるの?>
オカバンゴしっ地の大きさは、アンゴラ高原に降る雨の量によって決まります。雨が少ない年には、しっ地は小さくなってしまいます。周りに暮らす人間の数が増えて、川から町へ水を引く量がますます増えていくので、しっ地がどんどん小さくなるのではと、心配されています。
地図にないはずの場所にとつ然しっ地が現れるなんて、世界では不思議なことが起こるんだね。水辺が現れると、動物や植物が動き出すのは、まるで水がま法をかけるみたいだね。
【参考文献】
・高橋裕/編『川の百科事典』丸善出版事業部