軟水、硬水、発泡水と地域
水が流れて通る地層や地形などによって、水には軟水と硬水というちがいが生まれます。水を育てる環境や、水のちがいによる食べ物のちがいもその地域の1つの文化となっています。異なる水の特ちょうをもった地域の食文化のちがいを見てみましょう。
1. 軟水・硬水とその地域の食文化
軟水と硬水 ※実際には、カルシウムもマグネシウムも水にとけているので目には見えません。
水には、大きく分けて「軟水」と「硬水」の2種類があります。これは、水にとけているカルシウムとマグネシウムの量で決まります。カルシウムとマグネシウムが少ない水は「軟水」、カルシウムとマグネシウムを多くふくむ水は、「硬水」です。
<ア. 軟水の地域と食文化>
軟水の地域と料理
日本の水は、ほとんどが軟水です。
日本は、山と海のきょりが短いので、岩石と水の接する時間も短くなり、ミネラルのとけ出す量が少なく、軟水となります。また、日本は、ヨーロッパと比べると火山地帯の岩が多いことも原因の1つとして考えられます。(くわしくは「種類」の中の「水の種類」を読んでください→)
軟水は口当たりがやわらかい水です。軟水にめぐまれた日本では、水そのものの味を生かす料理や食文化が発達しました。例えば、水を多く使うに物、しる物や、葉野菜をさっとゆでておいしく食べるという料理が多くなっています。米にたっぷり水をふくませてたきあげるご飯や、日本人のよく飲む緑茶のおいしさも、水そのものの味が左右するといっても言いすぎではありません。
<イ. 硬水の地域の食文化>
硬水の地域と料理
ヨーロッパには、日本よりも硬水が多いです。
ヨーロッパは地形がゆるやかで地下水が地層にふれる時間が長く、ミネラルがとけ出しやすいためと考えられます。また、大昔は海だった一部のヨーロッパの地層にミネラルをふくんだ貝がらや魚の骨が多くふくまれていることもえいきょうしていると考えられます。(くわしくは「種類」の中の「水の種類」を読んでください→)
硬水にはミネラル分がたくさんふくまれています。ミネラルが多い水で肉や野菜をにこむと、固くなってしまいます。そこで、スープストックを使った料理が発明されました。肉の骨などにふくまれるたんぱく質を長時間にこむことで、くさみや水のミネラルを取り除き、うま味だけを残すことができます。こうしてできたスープストックを調理用の水として代用することができるのです。また、野菜に熱を加えるときは野菜自体にふくまれる水分を利用して蒸したり、オーブンで焼いたりする料理が発達しました。に物はシチューのようなにこみ料理が多く、水だけでにこまずにスープを使い、ワインや生クリームを加えたりします。
2. 発泡水ができる地域
発泡水
大地の大きな変動によって天然の炭酸ガスを生み出す地層と地下水の地層がぐう然結びついて、天然の炭酸が入っている発泡水が生まれた地域があります。
ヨーロッパでは、こうした発泡水がよく飲まれています。食事のときに発泡水を飲むと、炭酸が胃腸をし激して消化をうながしてくれたり、炭酸ガスで満腹感を感じさせて、食べすぎをおさえてくれたりします。
もっと“わくわく”水コラム! 「名水百選って?」
日本にはあちこちに「名水」と呼ばれる自然の水があります。そのうち、1985年(昭和60年)に当時の環境庁が全国100か所の名水を選び、「名水百選」としました。さらに、2008年(平成20年)に、環境省が全国各地から100か所の名水を選び、「平成の名水百選」としました。
「名水百選」と「平成の名水百選」は、きれいな水を育てる地域の環境を守っていくことを目的として、全国からそれぞれ100の名水地が選ばれました。
地域によって水には軟水と硬水とがあって、それぞれに合った料理が考えられてきたんだね。発泡水という炭酸が入った水をよく飲む地域もあるんだ。