世界で初めてできた水道
世界で最初の水道ができたのは、今からおよそ2300年前のローマです。ローマ水道と呼ばれていて、今でもヨーロッパにその一部が残っています。そんな昔に、どのような水道を、どのようにつくったのでしょうか。一番古い水道の世界を、のぞいてみましょう。
1． ローマてい国が水道をつくったわけ
紀元前800年ごろ、今から2800年ほど前、今のイタリア半島の真ん中あたり、テベレ川のほとりに町がありました。この町の指導者が、だんだん領土を広げていき、やがてローマという国になりました。
領土を広げるためには、大勢の兵士が必要で、ローマは兵士を集めた結果、5万人が暮らす大きな街になりました。みんなで使う浴場やトイレがつくられ、人びとの使った水とあふれる雨水を流す仕組みを持った下水道が必要になりました。国が大きくなり、また、人間の数が増えると、都市での水不足が問題になってきました。テベレ川の水やい戸、泉だけでは足りなくなってきたのです。
街の水不足を解決するために、近くの山の水源地から、直接水を引く工事がおこなわれました。 アッピア水道、マルキア水道など、11の水道が建設されました。
ローマが支配する街では、きれいな水を必要なだけ使うことができ、はい水も下水道に流されていました。暮らしやすく、衛生的な街をつくることは、大きな国の中で人びとを平和に治めていくために、とても重要なことでした。戦いのない時期には、兵士達は水道の建設や修理をして、水道の整備に大きな力を注ぎました。
2． ローマ水道の仕組み
それでは実際に、どのような水道なのか、くわしく見ていきましょう。
写真は、スペインに残っているローマ水道の一部です。2000年たった今もなお、こわれずに姿をとどめています。水道というより、橋に見えますね。この橋の中に水道管があり、そこを水が流れていったのです。
1世紀ごろにつくられ、中世には「悪まの橋」と呼ばれたセゴビアの水道（スペイン）
＜ア． 何でできているの？＞
ローマ水道のほとんどは、石でできています。水の通る管は、初めは木をくりぬいてつくったり、とう器でつくったりしていました。金属をつくる技術ができてからは、なまりでつくった管が使われました。
＜イ． どうしてアーチ形なの？＞
山の水源地と街は、何十キロメートルもはなれています。そんなに長い橋をかけるには、石の重さにたえられるじょう夫な形が必要でした。アーチ形は、重さによくたえ、くずれにくい、一番よい形だったのです。また、山から街へむかって水が流れやすいように少しかたむきをつけました。
＜ウ． ローマの人は、どのくらい水を使っていたの？＞
ローマ市内には11の水道があり、その長さは、全部合わせて約484キロメートルでした。このきょりは東京から京都より長いことになります。最大給水能力は1日あたり1,000リットルだったそうです。しかし、自分の家まで水道を引くことができたのは一部のお金持ちだけでした。
ローマの水道が、2000年もたったのにまだ残っているなんて、すごい！ ローマの人達は、本当にじょう夫な橋をつくる方法をよく知っていたんだね。ローマのようなきょ大な国をつくるには、水のある暮らしを守ることが大切だったんだ。
【参考文献】
・今井宏／著 『古代のローマ水道—フロンティヌスの『水道書』とその世界』 原書房
