しっ地の人びとの暮らし
生き物の祖先はしっ地から生まれ、進化したといわれています。そして、現代を生きるわたしたちにとっても、しっ地は水が豊かな、めぐみの場所です。しっ地の働きを知り、わたしたち人間や他の生き物達との関係を探ってみましょう。
1. しっ地の働き
しっ地には川が海に注ぎこむ場所の近くにできる干がたや三角州など、海水の混じるもの、池やぬまに土砂がたまってできたもの、その他にも様ざまなものがあります。水の豊かな土地、しっ地は今でも人間や生き物にとって、とても大切な場所です。しっ地には次のような働きがあります。
<ア. たくさんの植物を育む>
しっ地では他の陸地では見られないき少な植物が育つことができます。
パピルス、マングローブ、うき草、イグサ、ガマ、ヨシ・ヒエなどのイネ科の植物などがたっぷりしげります。
<イ. いろいろな生き物が集まる>
しっ地やその近くには、豊富な植物をえさにするこん虫や草食動物がたくさん暮らしています。それを食べる肉食動物もしっ地の近くで暮らしています。しっ地にはいろいろな種類のえさがたっぷりあるので、いろいろな生き物が暮らせるのです。
<ウ. いな作文化の始まり>
人間は、自然に生えていた野生の稲を食べるようになり、やがてそれがしっ地でのいな作文化へ発展していきました。今や米は、世界中の人びとの重要な食料の1つになっています。
2. しっ地と人びとの暮らし
世界の歴史の中で、大きな文明が栄えた場所は、大きな川のデルタ地帯=三角州でした。日本でも、東京・名古屋・大阪・福岡などの大きな都市の一部は、もともと干がただったところにつくられた街です。デルタ地帯の周りには人が集まり、文化が生まれやすいのです。
今でも、世界中で多くの人びとがしっ地の周りで暮らしています。しっ地は豊かなめぐみをあたえてくれますが、しつ度も高く、水のひ害も受けやすい場所です。人びとが、しっ地の暮らしでどのような工夫をしているか、見てみましょう。
<ア. 家>
家は、カヤ、ヤシ、マングローブ、竹など、しっ地やその周りでとれる植物を利用してつくっているところもあります。水にぬれないように、高ゆか式の家が多い他、東南アジアのマレーシアやブルネイには、ボートのように水にうかぶ家で暮らしている人もいます。
<イ. 交通手段>
しっ地での移動の主役は、ふねです。アンデスでは、アシ(ヨシ)というしっ地に生える植物でつくった、軽いふねを使っています。ふつうのふねに比べるとふねの後ろが丸く、ふね全体が平たく、水にしずんでいる部分が少ないのが特ちょうです。
アンデスのアシぶね
<ウ. 畑も水上!>
インドのカシミール地方・ダル湖やミャンマーのインレ湖では、湖の上で野菜を育てています。育てた野菜などを売るのも、水上の市場です。
今も昔も、わたしたち生き物にとってしっ地は大切な自然のめぐみなんだね。人間の暮らし方も、しっ地に合わせた工夫がいろいろあるんだ。