しっ地と生き物の誕生
川や湖の近くには、水気の多い、じめじめした場所があります。それがしっ地です(しっ地の定義には様々なものがあります)。地下水や川の水が近くを流れているので水分が多く、たくさんの植物がしげり、いろいろな生き物が暮らしています。しっ地と生き物の誕生にはどのような深い関わりがあるか、見てみましょう。
命を育んだ水辺・しっ地
地球の年れいはおよそ46億年で、最初の生き物が生まれたのは海の中、地球誕生から10億年くらい後のこととされています。これらはけんび鏡でなければ見ることができないくらい、小さな生き物でした。
生き物はその後長い間、水の中でゆっくりと進化していきます。初めに水から陸へ上がった生き物は、植物の仲間でした。そして、それをえさにする生き物達が続いて上陸します。人類の祖先、えん人が誕生したのはわずか600万年〜700万年ほど前とされています。
水の豊かなしっ地は、陸で暮らす生き物達の出発地点です。30億年以上もの間、海の中で暮らしてきた生き物は、次にしっ地という水辺で進化をとげたのです。
生き物達が、どのように水をはなれて陸に上がったのか、大昔の水辺の世界を見てみましょう。
生き物の上陸
1) もの仲間のはんしょく
川からの水が流れこむ浅いところでは、栄養が豊かで、日の光もたっぷりなので、もがたくさんしげっていました。
2) コケの仲間の誕生
浅いところでは、大気にふれることが多いので、それから体を守るために、厚い表皮へと進化させました。コケの仲間の誕生です。
3) つるやくきを持つ仲間の誕生
コケの仲間達は、水からはなれても水を吸うことができるように、体の中に水の通る管を持つようになりました。そして、その体を支えるために、じょう夫なくきやつるなどを持つようになりました。
4) ムカデやヤスデの仲間の上陸
初めに水の中から出たのは、ムカデやヤスデの仲間ではないかと考えられています。ムカデやヤスデの仲間は陸の上で、植物のかれたものや、くさったものをえさにしました。
5) こん虫、サソリやクモの仲間の上陸
先に上陸したと考えられる、ムカデやヤスデの仲間などを食べるグループが、続いて上陸しました。
6) シーラカンスや肺魚などの生き物
こん虫や植物を食べる魚の仲間達が、浅いところで進化を始めました。空気中から酸素を取りこみ、浅い水の中をひれを使って歩き回りながら食べ物をとり、やがてそれが手足に進化しました。
7) 最初の両生類の誕生
浅いところで歩き回っていた生き物は、やがて手足を身につけて水から陸へ移りました。これがイモリやサンショウウオの祖先です。
しっ地は、水の世界と陸の世界を結ぶ役割をしているんだね!だからいろいろな生き物達がすみついているんだ。
【参考文献】
・カール・ジンマー/著、渡辺政隆/訳『水辺で起きた大進化』 早川書房