現代
水は、どの時代でも人の生活に欠かせないものです。現代に入ると、工業を発展させようとするあまり、きれいな水の大切さを忘れ、水をお染してしまいました。しかし、よごれた水によってもたらされたひ害は大きく、この反省から、日本では法律を制定し、きれいな水を守ることに取り組むようになりました。世界では国連を中心に、国境をこえて、地球の水や環境を守ろうと、将来に向けたさまざまな取り組みをおこなうようになりました。
1. 環境基本法
日本の四大公害病のうち「水俣病」「新潟水俣病」「イタイイタイ病」は水がお染されたことで起こった悲劇でした。このため、1967年(昭和42年)に公害対策基本法が制定されました。その後公害だけでなく、国をこえた地球規模の環境問題が増えてきました。このような大規模かつ複雑になった環境問題に取り組むために、1993年(平成5年)に公害対策基本法をはいしし、環境基本法が制定されました。環境基本法は、環境に優しい社会をつくり、日本だけではなく、地球の環境を守ることにより、将来の人達に自然環境を引きつぐことを目的としています。そこには過去の経験や反省から、国やき業だけではなく、わたしたち国民一人一人がそれぞれ責任を持たなければならないということが書いてあります。また、この法律で6月5日を「環境の日」と定めています。
2. 現代の水についてのいろいろな取り組み
現代では法律だけではなく、水や水を育む環境を守るさまざまな取り組みがされています。ここでは、いくつかごしょうかいしましょう。
<ア. 京都議定書>
いま、地球の温暖化が問題になっています。温暖化が進むと、水不足による干ばつや大雨、こう水などの現象が発生しやすくなります。また、海水がぼう張したり、氷河がとけ出すことにより海面が上しょうするため、生活に大きなえいきょうが出ると考えられています。
地球の温暖化を食い止めるためには、世界の国ぐにが協力しあわなければならない、という考えから、1992年(平成4年)、国連において「気候変動わく組条約」が決まり、1995年(平成7年)から毎年話し合いがおこなわれています。温暖化を進めてしまう二酸化炭素などのガス(温室効果ガス)を大量に出している国の多くは先進国であるため、この条約では、先進国が特に努力してガスを減らすべきであるとしています。
第3回の会議は1997年(平成9年)、京都で開かれ、先進国が出す温室効果ガスをどこまで減らすかという目標を定めた「京都議定書」をつくりました。日本では1990年(平成2年)に比べて2008年(平成20年)〜2012年(平成24年)の間に温室効果ガスを6%さく減することを約束しています。サントリーでも省エネルギー、二酸化炭素のはい出が少ないガス燃料への転かんを進め、二酸化炭素のさく減を図っています。
<イ. 国連「『命のための水』国際の10年 2005−2015」>
国連では、2000年(平成12年)にニューヨークで開さいされた国連ミレニアム・サミットで、21世紀の国際社会の目標として、ミレニアム開発目標を定めました。この中では、安全な飲み水を利用できずにいる人びとの数を、2015年(平成27年)までに半分に減らすことを目標の1つに定めています。
また、みんなが水の大切さを知り、どの国のだれもが、安全な水を使えるようになることを考え、進めるために、2005年(平成17年)〜2015年(平成27年)までの10年間を「『命のための水』国際の10年」としています。
<ウ. こども環境サミット>
国連環境計画(UNEP(ユネップ))では1995年(平成7年)から、世界のこどもたちが集まって、地球の環境や未来について話し合う「こども環境会議」を開いてきました。
2005年(平成17年)に日本で開さいされた「愛・地球博」の中で第6回の会議が開かれ、世界約60か国から10さい〜14さいのこどもたち約650名が集まりました。「持続可能な社会に向けて行動を起こそう」を議題にした会議の他、「水の大切さを楽しく学ぼう(主さい:サントリー)」などのワークショップ(体験型の講習会)もおこなわれました。この時、会議の名前が「こども環境サミット」に変こうされました。
水の大切さを楽しく学ぼう(主さい:サントリー)
<エ. 国や自治体、き業がおこなっている森や林を守る活動>
き業でも森や林を守るという意識が高まってきました。こうしたなかで国や自治体が制定した次のような制度を利用して森や林を守る活動に取り組むき業も増えてきました。
- 国
林野庁が1992年(平成4年)に制定した「法人の森林」制度で、すでにある森林を利用する「分収育林」制度と新たに森林をつくる「分収造林」制度があります。2005年(平成17年)までに全国420か所で157法人が1,944ヘクタールの国有林で森や林を守る活動を進めています。
サントリーでは「天然水の森 阿蘇」を始め4か所で「法人の森林」制度を利用した森や林を守る活動をしています。
- 自治体
鳥取県の「とっとり共生の森」制度など、全国の自治体で展開が始まっている制度があります。これは、自治体がき業と地元の森林所有者との間を仲立ちして森林保全活動をサポートしていく制度です。サントリーでは「天然水の森 奥大山」 など3か所で、これらの制度を利用して森や林を守る活動をしています。
<オ. 雨水利用>
日本では1980年代から、利用されていない雨水を水資源として生かす試みが進められてきました。雨水をトイレやそう除、園芸用の水として利用するだけでなく、非常用の水としてためておいたり、雨水をためることでこう水のひ害を軽くしたりすることもできるのです。
特に、東京都墨田区では早くから雨水利用に取り組みました。1982年(昭和57年)には両国国技館での雨水利用を開始し、今では墨田区が新しくし設をつくるときには雨水利用システムを取り入れることになっています。
日本国内でも、国際社会でも、地球の水を守り、環境を守ろうという約束をしたり、話し合いを続けたりしているよ。一人一人がよく考え、行動していくことが大切なんだ。